芸術家の街

はじめに

推奨人数は2人だが、それ以上でもそれ以下でも構わない。
人数によって最終選択が変わりやすいため、必要であれば【NPC】を追加してもよい。
本シナリオではクトゥルフ神話TRPGサプリメント「クトゥルフ2015」を使用する。
可能であれば用意してあることが望ましい。

更新情報

探索者について

結末の選択次第で探索者が後遺症を負う可能性がある。
本シナリオでは奇妙な探索者【深きものとの混血種】を採用している。
該当する探索者は狂気表も一部変更される。
以下、【混血種】は「深きものとの混血種の探索者」、【探索者】は「混血種でない探索者」を指す。

【探索者】の性別設定
【探索者】の性別によってシナリオ内の日記に登場する人物の性別が変わる。
ここで設定することで、該当箇所の整理を行う必要がなくなる。
※ 設定しなくともシナリオ深行に影響はない。

設定確認用:

【探索者】を該当探索者名に変更
探索者名を入力してボタンを押すと、以降の【探索者】が入力した探索者名に変更される。
※ 変更しなくともシナリオ深行に影響はない。

変更確認用:【探索者】

【混血種】を該当探索者名に変更
探索者名を入力してボタンを押すと、以降の【混血種】が入力した探索者名に変更される。
※ 変更しなくともシナリオ深行に影響はない。

変更確認用:【混血種】

登場人物

芸術家
深海都市の作者であり、深きものとの混血種。今回の件の元凶である。
醜い姿を愛した人に見られたくないがため、この街を作った。
独りよがりの愛が暴走した結果、無関係な人間を犠牲にして街を護ってきた。

店主
芸術家が初めて街に招待した混血種。
多大な感謝を元に芸術家のことを一方的に慕っている。
芸術家が何かを抱えていることを心配し、可能な限り支えたいと思っている。

ローブの人物
深海都市に招待されたかつての混血種。
神格に触れる魔導書と芸術家による非道な行為により精神を消耗し、完全なる深きものになってしまった。
街の混血種をクトゥルフの信者にするべく行動するが、それは結果的に将来巻き込まれるかもしれない人間を救う行為になっていたのかもしれない。

ジョン・ドゥ
芸術家の親友。【探索者】と瓜二つの容姿をしている。【探索者】と血縁者でも他人の空似でもどちらでも良い。
芸術家はに醜い姿を見られたくなくて世界に篭ったが、が姿を受け入れるか否かは打ち明けてみないとわからない。

背景

19世紀に存在した芸術家は深きものとの混血種であった。
芸術家は水中都市の夢を見て、自身の身体が魚に変化していることを自覚する。
親友であり愛するジョン・ドゥに醜い姿を見られたくなかった芸術家は、所持していた魔導書に書かれていた魔術を用いて深海都市の街を作りあげ、その街に篭った。
魔術による結界のおかげで身体の変化を抑えることはできたが、孤独に苛まれひたすら絵画を描き続ける日々を送る。
ある日、芸術家と同じように夢に怯える混血種が助けを求める声が聞こえた。
芸術家が混血種を街に招待すると甚く感謝されたため、自身と同じ混血種を街に招待することで、救済を与えると同時にジョン・ドゥが存在した世界を浄化することにした。
時々無関係の人間も招待してしまうことがあったが、その時は人間の精神力を魔力に変換し結界の強化に充てた。

混血種の一人が街で鍵を拾う。
その鍵は芸術家の隠し部屋に繋がっており、そこには混血種や深きもの、クトゥルフについての魔術書と、芸術家の日記が置かれていた。
恐ろしい魔術書と街の真実を読んでしまった混血種は途端に身体の変化が深行し、完全なる深きものになってしまう。
深きものはクトゥルフの信者を増やすため、また混血種たちを完全なる深きものにするために街の外へ出て仲間を呼ぼうとするが、結界が邪魔をして外に出られない。
結界を破壊するには芸術家を殺害すれば良いと知っているのに、その居場所がわからず海へ祈りを捧げることしかできなかった。

100年以上経った頃、【混血種】を招待する際に【探索者】が巻き込まれてしまった。
いつも通り人間を結界の強化に充てようとしたが、訪ねてきた【探索者】ジョン・ドゥと瓜二つであった。
かつて愛した人間の面影を持つ【探索者】を愛おしく感じた彼は、【探索者】の希望を可能な限り叶えようとする。

全てはジョン・ドゥが存在した世界のために行う、芸術家の独りよがりだ。

KP事前情報


深きもの
魚人。殺されない限り寿命がない。
クトゥルフを崇拝しており、群の中で最も長寿なものがダゴン・ハイドラとなる。

深きものとの混血種
身体の変化は一方的であり、戻ることはない。
いずれは人間社会から追放されることは不変の事実である。
深行が進み末期になると夢に深きものが訪れるようになり、広大な水中都市の暮らしを知る。
最終段階になると深きものが迎えにくる。
10%の混血種は最後まで変化しきらない(=人間でも深きものでもない)。

オリジナル設定
魔術により深きものの血を追い出せば、僅かな確率で人間に戻ることが可能である。
・別の人間と精神交換を行う。
・別の人間に精神転移を行う。
・遺伝子を書き換え別人になる。

開幕・展覧会

複数の芸術家が出展する展覧会を訪れることとなった。

作者が各々客人を招待していることもあり、展示室はそれなりに賑わっている。
アサリの貝殻にペイントをして物語を成すような小さなものや、骨格標本にゴスロリの服を着せたようなものなど幅広い作品があり、客人はそれぞれ自分の好みの作者と話し合っている。
作品が売れることもあるようだ。

一通り作品を観て回っていると、展示室の隅に忘れられたかのように置かれている絵画を見つける。

絵画「深海都市」
街が深海に飲み込まれてしまったかのように深く暗い絵だった。
作品名は「深海都市」であり、作者名は【not】というらしい。
周りを見渡しても作者らしい人物はいない。
※ 展示会終了まで絵画を見張っていたとしても、誰も絵画を回収しには来ない。
  仕方なく運営スタッフが保管するために倉庫に運んでいくだけである。

<芸術>
古くから海外でも活動しているが、誰もその素性を知らない。
その作品はいずれも深海に飲み込まれた街の絵であり、すべての作品名が「深海都市」となっている。

<オカルト>
「深海都市」が展覧会に出展された街では、行方不明者が出るという噂がある。
また、「深海都市」の絵画は最古で100年以上前から存在しているという説もある。
謎に包まれた作者と作品、奇妙な噂に魅了され、一部界隈では有名なようだ。

その日の夜、探索者は皆同じ夢を見る。

ひとりの男がいる。男はキャンバスに絵を描いていた。
街が深海に飲み込まれてしまったかのように深く暗い「深海都市」の絵だった。
不思議と身体が惹かれてゆく。
その行動に恐怖はなく、魚が水を求めるかのように当然なことだと感じた。
あなたは思わず絵画に手を触れる。
瞬間、姿を現した水があなたを包み込む。
突然のことに驚きはしたが、不思議と心地がいい。
まるでゆりかごに揺られているような――あなたが意識を手放す寸前、男が振り返る。
その顔は靄で覆われていた。

芸術家の街

目を覚ますと、そこは枯れ切った噴水と寂れたベンチが置かれた、街の広場のような場所だった。
しっとりと水を含んだ風が潮の香りを伴って髪を撫でる。
頭上の空には太陽が見えず、黒と錯覚するほど深い青で覆われている。
中央に高い塔を携えたこの街は、まるで深海に沈んでしまったかのように青かった。
嫌でも脳裏に考えが浮かぶ。ここは「深海都市」なのではないか。
絵画の中に迷い込んでしまった探索者はこの不気味な体験にSAN値チェック0/1
※ MPを5消費する。

※ 今後登場する人物は【店主以外】みな嘘をつかない。しかし認識の仕方や知識量には差がある。
※ 服装は昼間の格好で構わない。持ち物は身につけていたもの以外はないが、欲しいものがあれば街中で入手可能。

【混血種】は喪失したSAN値の累計が5の倍数になるたびに深行度が進む。そのたびにステータスを変化させること。
  描写例:
   ジリジリと正気を削られていく【混血種】は、自身の血が熱く沸いていることに気づく。
   その熱は瞬く間に全身を襲いあなたを苦しめる。
   しばらくすると熱は冷めたが、【混血種】の腕には鱗のようなものが出現していた。
   突然の苦痛、自身の体の変化に恐怖しSAN値チェック1/1d6

探索者が茫然としていると、街の住人であろう青年(深行度1)が声をかけてくる。
「大丈夫ですか?」

彼に違和感を抱く。
彼の口が発する言葉は明らかに異国の言語であるにも関わらず、言葉が通じた。

彼は探索者に優しい。
「あなたたちも【not】に救われたのですか?」
「ここにいる人は皆、【not】に救われ、護られている。彼には感謝しかない」

街について
街について尋ねると、彼は隠すことなく教えてくれる。但し以下の情報しか知らない。
「僕も最近この街に来たばかりであまり詳しくはないのだけど…」
・ここにいるのは皆、恐ろしい夢に悩まされていた人たち。
・この街に来てからは恐ろしい夢を見ていない。
・この街をつくり、僕らを招き入れてくれるのが【not】。
・この街の人間は皆、新たな仲間を歓迎する。
上記のことは全混血種に共通している。基本混血種は嘘をつかない。

恐ろしい夢
まるで海の中のような場所に、逞しい人影が複数ある。
それらは何かの儀式を行っているようで…やがて巨大な影が辺りを覆う。
不気味に大きいその影は、まるでタコの触手のように蠢いていた。
そして影は日に日に大きくなっていく。

帰り方
「帰り方? 知らないよ。僕らは帰りたくなんてないんだから」
「あなたたちはきっと混乱しているんだ。カフェで一息つくといいよ」

街全体

決して多くはないものの、それなりに人数がある。
様々な国籍の人種。しかし彼らの会話はすべて理解することができる。
【KP情報】

外に出歩いているのは基本的には深行度1・2・3の人物。4以降の者はあまり出歩かない。

カフェ

こぢんまりとしたカフェにまだらに客人がいるようだ。
ちぐはぐとしたランプが多数飾られており、橙色の明かりが店内を薄暗く照らす。
【KP情報】

店内が薄暗いのは客人が外見を気にせず過ごせるように。聞かれた場合は普通に答えても良い。

店主らしき男(深行度3)が探索者に気付き振り返る。
「いらっしゃい。新入りかな?」
気さくに声をかけてくる店主に、探索者は不気味さを感じる。
店主の唇は不自然なほどに薄く、何かの病気かと疑うほどに身体つきが逞しい。
そして一番不気味に感じたものは、ギョロリと探索者を見つめている、魚のような目だった。

「ああ、すまない。驚かせてしまったかな」
「この街は大きいけれど人数は多くはないから、だいたいの人とは顔見知りなんだ」
探索者を席へと促し、マグカップに飲み物を入れてくれる。
MPを消耗していた場合、この飲み物を飲むと1d3回復する。

客人に<目星>
個人差はあるが体つきは逞しく、ギョロリとした目を持つ人がちらほらといる。
【KP情報】

店主に街について尋ねたいことがあれば知っている限り答えてくれるが、【アトリエへの行き方】だけは教えてくれない。

また、すべてを知っているわけではないし、聞かれたことしか答えない。だって聞かれてないもん。

ただし、赤文字の情報は自ら提供してもよい。

カフェについて
・この街では食べなくても空腹は感じないため、娯楽的に食事をする。
・おすすめ料理はナポリタン。この街に来たときには知らなかったが、後から来た奴に教えてもらった。
・MP回復については特に何もしていないし、何も知らない。僕の淹れ方が上手だったのかな?
・食材などは定期的に【not】が仕入れてくれる。 「一人では寂しいって奴もこの街には多い。ここはそんな奴らの憩いの場さ」

街について
・大体の施設は揃っているが、中でも特徴的なものは美術館図書館かな。
・街の人間の共通点は「恐ろしい夢から逃れるために街へ招待された」こと。
・毎晩あの夢を見続けていると、次第に身体と精神に異変が起こるようになる。
・自分のままであり続けたい人間は【not】によってこの街に招かれる。
・この街は結界で守られている。おそらくそのおかげで僕らは人間のままでいることができる。
・帰り方は知らない。でも前にその話をしていた奴がいた気がする。
 →フードを深く被っている奴だった。そんなに深行して可哀想に。

店主について
・恐ろしい夢を見るようになったのは身体の変貌が始まった時期だった。
・僕がこの街に招待された初めての人物だ。この街には彼と僕しかいなかった。
・彼には感謝しかないよ。
・好物はナポリタンだよ。こんなに美味しいものは初めてだ。
・この店のマグカップは全部僕の手作りだよ。長いことこの街にいると暇だからね。
・夢っていうのもあったけど、僕も一人では寂しいってクチでね、だからカフェを開くことにしたんだ。

【not】について
・彼は芸術家であり、この街を作った。
・どうやってこの街を作ったのかは知らない。
・いつからか彼はアトリエに篭るようになった。
・アトリエの場所も行き方も知らない。
 →<心理学>嘘をついている。

アトリエの場所について
店主にアトリエの場所を尋ねても「知らない」としか答えない。
探索者が武力行使をしそうな場合は客人がそれとなく止めに入る。
武力行使をした場合は店内の客人3d2人(1人は深行度4・SAN値チェック0/1d6)との戦闘になる。
もしも客人を殺害するようなことがあれば、店主は絶対にアトリエへの行き方を教えてくれない。

美術館

決して大きくはない空間にいくつもの「深海都市」の絵画が飾られている。
しかし、一つとして同じものはない。

<アイデア>
絵画の街に見覚えがある。この街だ。
※ PLが自分で気付いた場合は判定なしで構わない。

<目星>
絵画の一部が動いたことに気付く。
よく見ると、探索者が目覚めた場所の絵画に、先ほど出会った青年らしき人物が描かれている。
【KP情報】

街の状況が時間差で更新される。もちろん、探索者の姿も描かれている。

「海」の絵画に<目星>
海を含む絵画に黒いローブを纏った人影が見える。
※ PLが「フードを被った人物を探す」と宣言した場合は判定なしで構わない。

もしも深海都市の絵画に危害を加えようとすると防御魔術が発動する。
探索者から1d6のMPと1d10のSAN値を吸い取る。なお、失ったMPは永久に回復しない。

街と海の境界がゆらゆらと揺れている海辺を歩くと、黒いローブを纏った人影を見つける。
海に向かって祈りを捧げているようだった。
近づいて気付いたが、彼の身体はローブの上からでもわかるほど異常に逞しく大きかった。
しかし、フードを深く被っているためその顔を伺うことはできない。
話しかけると会話をすることはできるが、その人物の口数は少ない。

【KP情報】

・この街に招待されたかつての混血種、今は深きものである。

・書庫にて魔術書と日記を読み、狂気に苛まれ完全なる深きものへとなってしまった。

・結界があるため外に出ることも仲間を呼ぶこともできずにいる。

・結界を壊す方法はわかっているが、彼一人では何もできないため外に出たがる仲間を探している。

・結界を破壊して街に仲間を呼び、街の混血種をクトゥルフの信者にするのが目的。

・思考も深きものに塗り替えられてしまったため、元の体に戻りたいとは思っていない。

・もしも探索者に「一緒に行こう」と誘われても「おれにはここでやることがある」と誘いを断る。

彼は愚かではない。魚人を否定する街で自身が悪目立ちをするわけにはいかないのだ。

探索者が声をかけるとローブの人物は祈りを中断して応答する。
「なんだ?」
彼は聞かれたことに対して全て答えてくれる。が、積極的には話したがらない。

ローブの人物について
・この街に呼ばれた
・外へ出たい
・この街は正しくない

結界について
・奴が作った
・術の媒体を消すか術者を殺せば消える
・結界がなければ外に出られる
・奴の居場所がわからない

素顔
【KP情報】

本人は積極的に素顔を見せようとはしないが、KP判断で見せても良い。

耳が極端に小さく鼻は平らに等しい。
ダブついた皮が首を覆い、皮膚には鱗のようなものが見えた。
広く離れた二つの目は大きく前へ飛び出しており、瞬きをする瞼はその役目を果たしていなかった。
魚だ。とても人間とは言い難いその素顔を見てしまった探索者はSAN値チェック0/1d6
さらに<アイデア>で「ここにいたら彼のようになってしまうのではないか」
自分が自分ではなくなる恐怖を感じ、SAN値チェック0/1d6

探索者が海を去る際、フードの人物は小さな鍵を渡してくる。
「これで真実を見ろ」

図書館

本棚が壁一面にしきつめられてもなお、溢れ出た本があちこちで山積みになっている。
背丈を優に越えるほど高く積まれた本は今にも雪崩れ落ちそうで、まるでこの世界の全ての本がここに集まっているようだ。
受付のような机はあるが司書などはいない。
図書館というより本の墓場のような場所だ。
【KP情報】

出版されている世界中の本はここにある。

会話と同じように異国の文字もなぜか理解することができる。

探索者が本の種類を指定して探索した場合
<図書館>
所蔵されている本であるならばすべて見つけることができる。

「深海都市」の画集
深海都市の絵画の画集。掲載されている絵画もこの街の風景だった。
一番古いものは100年以上も前のものらしい。
本人が出版したわけではなく、美術団体が絵画をまとめて出版したようだ。
<図書館>or<アイデア>
図書館の絵画に見覚えのない扉が描かれている。

「深海都市」のオカルト本
深海都市に関するオカルト的内容をまとめた本。
深海都市が展示された時期や地域と、その直後に失踪した行方不明者の人数などが記載されている。
なお、行方不明者は一人として見つかっていない。
<アイデア>
この街の人数は記載されている人数よりも明らかに少ない。

扉の位置は絵画の画角から推測することができる。
しかし、その前には乱雑な本の山が高くそびえていた。
本をどかすと画集の絵画と同じように扉が姿を現す。
扉には鍵がかかっていた。
ローブの人物から受け取った鍵で開く。 →書庫 へ

書庫

薄暗い街の中でも一層と薄暗い小さな部屋だった。
部屋の中に窓はなく、ポツリと置かれた机とその正面に小さな絵画だけが佇んでいた。

大方綺麗に整理されているが、一冊の日記が開かれた状態で置かれていた。

日記
18XX年
夢を見る。水中都市で魚人が暮らしているようだ。
日に日に鮮明になっていく水中都市での暮らしは、決して悪いものではないような気がした。
しかし、それに伴うように別の何かが私を塗り替えようとしている。
このままでは私の醜い姿をに見られてしまう。
それは耐えられない。私はこの世界を去り、私の街を作ることにした。

18XX年
孤独が好きだと信じていたが、それは孤独を知らなかったからだ。
夢を見なくなったが、その代償に私一人で耐えきれるだろうか。
何も考えずに済むよう、私は今日も絵を描くことにした。

19XX年
絵を描いていると、助けを求める声が聞こえた気がした。
私と同じく夢に悩まされているようだ。

19XX年
助けを求める声の主を街へ招いた。
やはり私と同じ悩みを抱えていたようだ。仲間がいたのだ。
私たちは何者なのだろうか。これを解明できれば、またに会えるようになるだろうか。

19XX年
時々街の外から視線を感じる。
一度だけその姿を見たことがあるが、奴らは人間の体に魚の頭部を持っていた。
逞しい体を持つ魚人はかつての夢に出てきた人影と同じだった。
この街まで迎えにきたというのか。

19XX年
奴らはdeep onesというらしい。そして私たちは奴らとの混血種だという。
およそ成人を迎えた頃から身体が魚にように変化していき、戻ることはない。
人間社会から追放されることは不変の事実のようだ。
こんなにも足掻いたのに、もうに会うことは叶わないのか。二度と。
それならば仕方がない。この街を守るため、蝋燭に火を灯すことにする。

他の書籍
幾つかの書籍の中に、異様に冷ややかな佇まいの本が置かれている。
(手にとると)カラカラに乾いた皮膚のようなざらざらとした肌触りだ。よく見ると毛穴のようなものがあり、うっすらと毛が生えている。
<アイデア>この本の表紙は人皮で装丁されている。悍ましい書物に触れてしまった探索者はSAN値チェック0/1

探索者が書籍を読もうとした場合、それは中国語で書かれているにも関わらずすんなりと読むことができてしまう。
※中身を読むか探索者に確認する。

R'lyeh Text(ルルイエ異本)
deep ones -深きもの-
deep onesは水陸両性の種族で、主としてcthulhuおよび父なるdagonと母なるhydraという名で知られる2匹の生き物に仕えている。彼らの異様で尊大な人生は冷たい美しさに満ちており、信じ難いほど冷酷であり、寿命というものがなく死ぬことがない。
deep onesの中には人間と関係を持つ者もいる。彼らは人間とdeep onesとの混血種を作ろうという強い欲望を持っているようだ。deep onesは殺されない限り自然死ということをしない不死の身だが、混血種たちもそれは同じである。
混血種は子供のうちは人間と同じに見えるが、成長するにつれてだんだん醜くなっていく。そして個人差はあるが、成人を迎えた頃に突然、2,3ヶ月の急激な変身期間がやってきて、deep onesに変身するのである。

dagon & hydra -ダゴンとハイドラ-
父なるdagonと母なるhydraは、deep onesがサイズの面でも年齢の面でも大きく成長したものである。彼らの身の丈は6m以上あり、年齢はたぶん何百万歳にもなるだろう。彼らはdeep onesを支配し、deep onesたちのcthulhu信仰を率いている。

cthulhu -クトゥルフ-
cthulhuが棲んでいるのは、太平洋の海底に沈んだ、見捨てられた暗黒の都市ルルイエである。彼はそこで生きたまま死んでいるような状態になっているが、いつの日か都市ルルイエが地上に現れて復興する時がくれば、cthulhuも目覚めて解放され、世界を荒廃に導くだろう。

とてもこの世のものとは思えぬ内容であったにも関わらず、探索者はその全てが真実であると理解してしまう。
恐ろしい神々の存在を認知してしまった矮小な探索者はSAN値チェック1d6/2d8と<クトゥルフ神話技能>+1d6

絵画
ひとりの男がいる。男は大きなキャンバスに絵を描いていた。まるであの夢のように。
<目星>
彼の横に置かれた小さなテーブルには、歪な形のマグカップが置かれている。

<アイデア>
カフェで提供されたマグカップだ。

カフェ(再訪)

探索者が再びカフェを訪れると、店主は「いらっしゃい」と声をかけてくれる。
店主は注文を取る以外自分から話すことはない。

アトリエの行き方
ただ尋ねるだけでは店主は知らないふりをする。
「【not】の絵画にカフェのマグカップがあった」旨の発言をした場合、
店主は静かに「そうかい」と言ってマグカップに飲み物を入れて探索者に渡してくる。
「それじゃあお使いを頼むよ。そろそろ飲み終わってしまう頃だろうからね」
マグカップから立ち上がる小さな湯気には広場が映されていた。

広場

広場には誰もおらず、噴水とベンチだけが佇んでいる。
湯気にはベンチに腰をかける人影が映されている。
マグカップを持ったままベンチに腰をかけると、湯気に映された瞳がゆっくりと瞼を下す様子が描かれる。
探索者がゆっくりと瞼を下すと →アトリエ へ

アトリエ

「おや、初めまして、かな?」
声をかけられる。
探索者が目を開けるとそこは広場ではなく、幾つもの蝋燭に照らされた温かなアトリエだった。
大きな窓からは外の様子が見える。どうやらここは塔の上部らしい。
そして目の前にはひとりの男がいる。彼が【not】だ。
彼は見た目こそ若い男性のようだが、その物腰と口調はとても紳士的だった。
「お使いありがとう。ちょうど喉が渇いていたんだ」
【not】は探索者からマグカップを受け取り一口飲むと、近くにあった椅子に腰をかけた。

「それで、どういうご用件かな?」
もしも<心理学>をした場合、彼は微かに動揺していると気がついて良い。

【KP情報】

何か質問をした場合、聞かれたことに対しては全てを包み隠さず話してくれる。

ただし、赤文字の情報は自ら提供してもよい。

結界について
・私が術をかけているよ。
・街の外ではdeep onesという魚人が僕たちを仲間にしようと狙っているんだ。
・私は街のみんなを守りたいから結界を張らせてもらった。

深海都市について
・ある本を読んだ日を境に夢を見るようになったから、その本に書いてあった通りに魔術を使った。
・魚人になりたくなくて街を作ったのに、それでも深海都市の絵を描き続けてしまうのはなぜだろうね。
・私はすでに深層心理では魚人なのかもしれない。

街に招待された人の数と住民の数が合わない
・時々私たちに共鳴した人間を招待してしまうことがあった。
・普通の人間なのに共鳴するのは魔力の高い人間だけだから、彼らにはこの街を守る手伝いをしてもらっているんだ。
・ほら、みんなそこにいるだろう?蝋燭だよ。
・彼らの魔力を蝋燭に移して結界の強化をしてもらっているんだ。
・私一人では限度があるからね、彼らには感謝しかないよ。

日記の「」について
「おや、他人の日記を読むなんて随分悪趣味だね」
は私の親友だったが、僕はを愛していた。
・でも私は魚人だから、に迷惑をかけたくなくてこの街に籠った、それだけだよ。

探索者が「帰りたい」旨の発言をすると
「ああ、すまない。普通の人間も招待してしまったようだね」
「もちろん、お帰りいただいて構わないよ」

「ところで君も帰るのかい?」
彼は【混血種】に問いかける。

「ここに来たということは自分がどういう人間なのかわかっているはずだ」
「この街に残るというのなら私たちは喜んで歓迎するよ」
「でも、このまま元の世界に帰るというのなら、残念ながら私は君を引き留めないといけない」
が愛した世界を汚してはいけないんだ」

分岐1:【探索者】が「【混血種】と一緒に帰りたい」と願う
分岐2:【混血種】は街に残る
分岐3:【not】を殺す
分岐4:蝋燭の火を消す

【探索者】が「【混血種】と一緒に帰りたい」と願う
「…そうか、君には自分を受け入れてくれる友人がいるんだね」
「ただ、君をこのまま元の世界に帰すわけにはいかない」
「君だって魚人になりたくないだろう?私も世界を汚したくはない」
「だから賭けをしないかい?」

「魔術によりdeep onesの血を追い出せば、僅かな確率で人間に戻ることができる」
「方法は3つ。でも君の耐久値では1つしか試せないだろうね」
1 別の人間と精神交換を行う。
 コスト:任意のMPと1d3の正気度
 術者を知っていて愛しているか強い好意を持っている人間との精神を交換する。

2 別の人間に精神転移を行う
 コスト:10MPと1d10の正気度
 対象と永久的に精神を交換する。対象との対抗POWロールが必要であり、失敗した場合は再度精神転移を使用しなければ精神は行き場を失い永遠に消滅する。

3 遺伝子を書き換え別人になる。
 コスト:1d6HPと10MPと1d6の正気度
 遺伝情報を書き換え別人になる。記憶はそのまま、該当者の基本能力値を再度振り直す。
 描写:【混血種】の身体は歪な音を鳴らしながら変化していく。
    ある箇所は膨張し、ある箇所は縮小し、またある箇所はそのものが作り替えられる。
    人体が作り替えられていく様子を目の当たりにした【探索者】はSAN値チェック0/1

魔術を成功させると
「おめでとう。これで君は正真正銘の人間だ」
「それでは、お帰りいただいて構わないよ」

彼はアトリエの隅から1枚の絵画を取り出す。
輝く太陽が草花を祝福するかのように温かな絵だった。
「この絵に触れると元の世界に帰れるはずだ」
探索者が絵画に触れると、意識が柔らかく包み込まれ、ゆっくりと薄れていく。

「さようなら、きっともう会うことはないだろう」
彼の言葉が聞こえた気がした。
→終幕1
【混血種】は街に残る
「うん。それがいい。私たちは君のことを歓迎するよ」
「お別れが済んだらまた声をかけておくれ」
※探索者が【not】の様子を伺うと
探索者たちが会話をしている中、彼は【探索者】を愛おしそうに見つめている。

彼はアトリエの隅から1枚の絵画を取り出す。
輝く太陽が草花を祝福するかのように温かな絵だった。

「この絵に触れると元の世界に帰れるはずだ」
【探索者】が絵画に触れると、意識が柔らかく包み込まれ、ゆっくりと薄れていく。

「さようなら、きっともう会うことはないだろう」
彼の言葉が聞こえた気がした。
→終幕2
【not】を殺す
探索者が【not】を殺そうとすると、彼は抵抗なしに殺される。
「いずれはこうなっていたんだ」
「ああ、ごめん。ジョン
彼が呟くと同時に、アトリエが、街全体が、激しく揺れた。
倒れた蝋燭は画材に火を灯し、アトリエは燃える炎に包まれる。
※ここから現実時間10分以内に深海都市から脱出しないと→終幕5※
街の外には小山ほど巨大な何かの影が現れ、それに従うかのように無数の魚人が街へ侵入する様子が見えた。
住民の悲鳴が聞こえる。

※手にかけたのが【探索者】だった場合、
「私を殺すのが君でよかった」

「お願いがあるんだ。君だけは無事に帰ってほしい」
彼はアトリエの隅を指さすと、微笑んだまま力尽きた。

アトリエの隅
【not】が指したアトリエの隅を調べると、1枚の絵画が出てくる。
それは輝く太陽が草花を祝福するかのように温かな絵だった。

探索者が絵画に触れると、意識が柔らかく包み込まれ、ゆっくりと薄れていく。
→終幕3

の絵
もしも探索者が更にアトリエを探索するというのなら、1枚の肖像画を発見する。
そこに描かれていたのは【探索者】と瓜二つの人物だった。
絵画の端には「ジョン・ドゥへ 愛を込めて」と記されている。
※探索者が【not】の日記を読んでいた場合
その筆跡は日記のものと同じだった。
蝋燭の火を消す
探索者が蝋燭の火を消すと、アトリエが、街全体が、激しく揺れた。
街の外には小山ほど巨大な何かの影が現れ、それに従うかのように無数の魚人が街へ侵入する様子が見える。
「魚人が来たね。この街はもうダメだ」
「君(【探索者】)を死なせるわけにはいかないから、」

彼はアトリエの隅から1枚の絵画を取り出す。
輝く太陽が草花を祝福するかのように温かな絵だった。

「帰りなさい。もう巻き込まれてはいけないよ」
探索者が絵画に触れると、意識が柔らかく包み込まれ、ゆっくりと薄れていく。
崩落するアトリエの中で、彼は笑みを浮かべていた。
→終幕4

終幕

探索者が目を覚ますと、そこは見知った自分の部屋だった。
外へ出ると頭上には澄み切った青い空と暖かい太陽があなたを出迎える。
無事に元の世界へ戻ってこられたのだ。

【混血種】は新しい自分の姿にしばらく慣れないかもしれない。
しかし周囲の人間はなぜかあなたを【混血種】だと認識していた。
それは彼からのささやかな贈り物だった。

その後、探索者が以前の夢を見ることは一度もなかった。
しかし変わらず深海都市は世界各地にて展示され、その都度行方不明者が出ているようだ。

ED:絵画「深海都市」
【探索者】が目を覚ますと、そこは見知った自分の部屋だった。
外へ出ると頭上には澄み切った青い空と暖かい太陽があなたを出迎える。
無事に元の世界へ戻ってこられたのだ。
変わらず深海都市は世界各地にて展示され、その都度行方不明者が出ているようだ。

【混血種】は深海都市に取り残され、いずれ終わりが来る日まで仲間たちを歓迎し続けた。
今日も水を含んだ風が【混血種】の髪を撫でる。

ED:芸術家の街
探索者が目を覚ますと、そこは見知った自分の部屋だった。
外へ出ると頭上には澄み切った青い空と暖かい太陽があなたを出迎える。
無事に元の世界へ戻ってこられたのだ。
その後、深海都市が展示されることは二度となかった。

ある晩、【混血種】は夢を見る。
まるで海の中のような場所に、逞しい人影が複数ある。
それらは何かの儀式を行っているようで…やがて巨大な影が辺りを覆う。
不気味に大きいその影は、まるでタコの触手のように蠢いていた。

ED:魚人の迎接
探索者が目を覚ますと、そこは見知った自分の部屋だった。
外へ出ると頭上には澄み切った青い空と暖かい太陽があなたを出迎える。
無事に元の世界へ戻ってこられたのだ。
相変わらず深海都市は世界各地にて展示され、その都度行方不明者が出ているようだ。

ある晩、【混血種】は夢を見る。
まるで海の中のような場所に、逞しい人影が複数ある。
それらは何かの儀式を行っているようで…やがて巨大な影が辺りを覆う。
不気味に大きいその影は、まるでタコの触手のように蠢いていた。

ED:新しい街
燃え盛るアトリエに限界を感じ、探索者は無我夢中でその場を脱出した。
息を吐く間もなく、街に異変を感じる。
周囲には無数の魚人がおり、そして小山ほどの大きさの影が近づいてくる。
その姿をはっきりと目視した時、【混血種】は自身の血が沸き上がるほど喜んでいることを感じた。
全身を駆け巡る熱は急速に身体を変化させ、やがて完全なる魚人の風貌へとなり遂げた。
素晴らしい神を、我らが主人を讃えなければ!無意識のうちに口ずさむ。

- ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うがふなぐる ふたぐん -

ただひとり残された【探索者】はSAN値チェック1d10/1d100
狂気に取り憑かれた【探索者】は、いずれ終わりの日が来るまで魚人と共に大いなるクトゥルフを崇め続ける。
正気を保てたとしても、魚人の街から抜け出すことはできない。

ED:魚人の街

おわりに

「深きものとの混血種」を探索者にしたいと思い、勝手に書き始めました。
全く書かなかった時期があったので数年掛のシナリオとなりましたが、割と良い物語になって満足しています。
ご存知の方もいるかと思いますが、「ジョン・ドゥ(ジェーン・ドゥ)」とは名無しの権平の意です。
芸術家は親友に打ち明けても良かったのに、それができないのが恋心なんでしょうね。